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木陰のなかの水たまり

日常のささいなことや、光や影について、ゆるく書いていければなと思います。

『夜間飛行』『人間の土地』を再読して

最近、前々から読みたいと思っていたサンテグジュペリの『夜間飛行』と『人間の土地』を読了した。どちらも学生の頃に読んで、なんだか抽象的な内容に眠くなってしまったのを覚えている。ただ、自分の書棚を見るたびに、「もっと私のことをちゃんと読んでよ」と訴えられているようで、この年までずっと気にかかっていた。もちろん、これらの2作が大変評判がよく、私もしっかり味わいたいと思ったのも再読した理由なのだが。

さて、読了してみての感想は、描写が美しくて大変面白かった。文章の読みにくさは相変わらずあったが、あれは抽象的というよりも独特のリズムのせいだろう。もちろん、そのリズムが作品を一層深いものにしているのは確かで、ただそれに身体を馴染ませるのに時間がかかる。『夜間飛行』『人間の土地』を一気に読んだからこそ、なんとかそのリズムを捉えることが出来た。

私は感想をうまく表現することが苦手なので、レビューのようなことはできない。しかし、2作を読んで「公益は多くの犠牲から成り立っている」ことを思い知らされた。とくに、今日当たり前になっている夜間の空輸には、20世紀初頭にはあまりにも危険がつきまとっていた。それをある種の誇りを抱きながら、死を覚悟して空を開拓していった飛行機乗りには魅せられたし、飛行機乗りだからこそ感じた自然の驚異がありありと描かれていた。

最初に読んだ時から何十年も経ってしまったが、今この年になってサンテグジュペリの作品を味わうことができたのは、非常に幸運だと感じる。人間歳を重ねるにつれ、心揺さぶられる経験というのは少なくなっていくからだ。本でも絵画でも映画でも、鑑賞後の何とも言えない清々しさをできるだけ多く求めたい。まだまだ世界には、私たちが知らない世界がたくさんあるはずだ。