雨の匂いがもたらす追憶
昨日、雨が降った。
久しぶりの雨だ。
雨がアスファルトに落ち、それがもたらす匂い。
雨が、土や森林に落ち、それがもたらす匂い。
雨の匂いが好きだ。
雨の匂いは、過去を思い出す遠因になる。
たとえば、学生時代、好きだった異性と雨の中ベンチに座り、語り合った時間。
たとえば、雨の中ひとり寂しく、都会の喧騒を歩いた時間。
たとえば、放課後、傘をさしながら友人と笑いあった帰り道。
どれもその当時は、雨に濡れて不快な気分だったはずだが、なぜだか思い出されるのは郷愁と哀愁の狭間のような、何とも言えない感覚だ。
そんなことを思い出しながら、昨日、雨の中家に帰った。